発生研究部門の竹林公子研究員、鈴木 厚准教授らの研究グループは、体軸形成の新機構を発見し、国際誌Development, Growth and Differentiationに発表しました(文献1)。

ヒトを始めとする脊椎動物では、受精卵が発生する過程で神経が誘導される背側と、内蔵が位置する腹側の違いが生じるとともに、頭-尾の方向に伸長して頭部と胴尾部にはそれぞれ脳と脊髄が形成されます。この発生初期に起こる身体の形作りは体軸形成と呼ばれ、その後の器官・臓器の形成に極めて重要な出来事です。また、背腹と頭尾の形成が協調的に起こることが正常な発生に必須ですが、その機構はほとんど分かっていません。今回の研究では、ジンクフィンガータンパク質Zbtb14(別名BMP inhibitory zinc finger; Biz)が、背腹と頭尾の形成システムを結び付けていることを明らかにしました。

 

過去の研究から、背腹と頭尾の違いは、それぞれ骨形成タンパク質(BMP)とウィントタンパク質(Wnt)の働きにより生み出されることが分かっています。これらの分泌タンパク質はモルフォゲンと呼ばれ、細胞に働きかけて未分化状態の維持や細胞分化を誘導します。この際、細胞内ではそれぞれBMPシグナルとWntシグナルが活性化されて核へと情報を伝えています。これらのシグナルが細胞内で互いに統合・情報処理されることが背腹と頭尾の形成が協調的に行われるために重要と考えられます。私達の研究からZbtb14/Bizは、BMPとWntのシグナル伝達因子を調節することで、背腹と頭尾の形成システムを結び付ける重要な役割を果たしていることが分かりました(図1)。Zbtb14/Bizに変異を持つマウスは、心臓や腎臓の病気を発症することが報告されています(文献2, 3)。したがって、今回発見された新しい調節機構は、初期発生だけでなく器官・臓器の形成や病気の発症機構の理解に貢献することが考えられます。

 

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図1. Zbtb14/Bizは、BMPとWntのシグナル伝達を調節することで背腹と頭尾の体軸形成を協調的に制御する。また、当研究室で単離したOct-25およびFoxb1と共に体軸形成を制御する遺伝子ネットワークを構成している。

文献1

Takebayashi-Suzuki, K., Konishi, H., Miyamoto, T., Nagata, T., Uchida, M. and Suzuki, A. “Coordinated regulation of the dorsal-ventral and anterior-posterior patterning of Xenopusembryos by the BTB/POZ zinc finger protein Zbtb14” Development, Growth and Differentiation 60, 158-173 (2018)

 

文献2

Li et al. “Global genetic analysis in mice unveils central role for cilia in congenital heart disease”

Nature 521, 520-524 (2015)

 

文献3

San Agustin et al. “Genetic link between renal birth defects and congenital heart disease” Nature Communications 7, 11103 (2016).