研究内容


[卵形成・卵成熟]
研究スタッフ・・・古野伸明(准教授)

 細胞が倍加するときの過程を細胞周期といい、この過程は通常4つの段階(G1期, S期, G2期, M期)に分けられる。細胞周期の観点から見ると、減数分裂はS期をスキップして2回の連続した分裂を行う。また、受精後は、両生類の場合、最初の一回はG2期があるものの、その後はG1期、G2期のない非常に早い分裂を行う(図1)。特に、減数分裂では、通常のS期がなく2回の連続した分裂を行い体細胞分裂と著しく異なっている。そのため、高校の教科書等では、細胞分裂は体細胞分裂と減数分裂の2種類あると記述されている。しかしながら、我々は、減数分裂の時に特異的に発現するmos原がん遺伝子の機能を阻害すると、卵において減数分裂中にDNAが複製される事を見いだした(図2)。さらに、タンパク質合成阻害剤であるサイクロヘキシミド処理を行うとG1期やG2期が出現した。このことから、減数分裂は、教科書等に記述されているように体細胞分裂とは全く違った分裂でなく、もともと体細胞分裂起源であり(図3)、減数分裂期に特殊な細胞周期調節因子が発現する事や、細胞周期調節因子が通常と違った調節を受ける事で実現されていると考えてその機構解析を行っている。

 実際、この時期に細胞周期調節因子を詳しく調べると、体細胞周期調節因子のサブタイプが特異的に出現したり、体細胞分裂時に存在する調節因子が存在しなかったりする。例えば、サイクリンBは分裂時に必須であるが、これもB1とB2サブタイプが存在する。KOマウスの結果からB2は必須でない事が明らかになったが、我々の研究から、卵減数分裂から初期胚にかけての分裂装置の形成に必須である事を明らかにした。このことは、卵減数分裂時には、その次期特異的に働く細胞周期調節因子が存在するという仮説を裏付ける。

 現在、どのような細胞周期調節因子が卵減数分裂時にどのような機能を果たしているかを、CRISPR/CASを用いて解析を進めている。同時に、このような卵特異的な細胞周期調節因子が何故卵特異的に発現するのかを、トランスジェニックカエルを作製する事で、その遺伝子の上流のcis elementの探索も行っている。また、受精直後に、なぜ一回だけG2期が出現する機構解析も行っている。


[初期発生]
研究スタッフ・・・鈴木 厚(准教授),竹林公子(研究員)

初期発生を制御する遺伝子の同定と解析

様々な形態が作られる仕組みを知る


[生殖器発生・分化・機能]
研究する教員・・・高瀬 稔(准教授)


[変態(メタモフォシス)]
研究スタッフ・・・矢尾板芳郎(教授),花田秀樹(助教),中島圭介(助教),田澤一朗(助教)

我々は近年急速に発達を遂げたゲノム編集技術をいち早く取り入れ、ゲノム編集効率を大幅に上げる技術(Nakajima & Yaoita, Biology Open 4: 180-185, 2015)や生殖細胞のみでゲノム編集を行う技術(Nakajima & Yaoita, Biology Open 4: 259-266, 2015)を開発しツメガエルにおけるゲノム編集技術の発展に大きく寄与してきた(Nakajima et al., Dev Growth & Differ 54: 777-784, 2012; Nakajima et al., Zool Sci 30: 455-460, 2013; Nakajima & Yaoita, Biology Open 2: 1364-1370, 2013)。現在 (2017年) はゲノム編集により変態現象を司る甲状腺ホルモン受容体αとβのノックアウトガエルを作製することにより二つのサブタイプの役割の違いを解明し、論文投稿中である。また、様々なノックアウトガエルを作製し、海外共同研究(Nakayama et al., Dev Biol 408: 328-344, 2015; Nakai et al., Genes Cells 21: 275-286, 2016; Nakayama et al., Dev Biol 426: 472-486, 2017)や国内での研究(Nakajima et al., Zool Sci 33: 290-294, 2016; Nakai et al., Zoological Science in press; 他共同研究3件進行中)を進めている。変態現象は水棲生活を営む幼生(オタマジャクシ)が陸上生活に適応するためにほとんどの器官で観察される劇的な変化であり、甲状腺ホルモンによって引き起こされる。変態に関する様々な研究が古くから行われてきたものの詳しい分子機構には未だに謎が多い。幼生は手足が成長した後に尾の退縮を示すことは周知の事実だが、血液中を流れるホルモンの濃度は全身で等しく、なぜ手足と尾で反応時期が異なるのかその分子機構は不明であった。我々は各器官の甲状腺ホルモンに対する感受性は受容体の発現量によって決められている事を明らかとした。感受性の高い後肢は受容体の発現量が多く、感受性の低い尾は発現量が少ない事。感受性の低い尾において受容体を強制発現させると感受性が高くなる事。さらにこの感受性の増加には甲状腺ホルモンの活性を細胞内で高める脱ヨード化酵素の発現誘導が関与している事を明らかとした(Nakajima et al., Genes Cells 17: 645-659, 2012)。一方、尾の筋細胞死の分子機構の研究も行った。尾の退縮は変態過程の中でも最も劇的な変化を見せるものであり、体長の2倍以上ある器官が数日のうちに消えてしまう。これまでに細胞死に関わるカスパーゼ-1,-2,-3,-6,-7,-8,-9,-10をツメガエルにおいてクローニングし、発現解析、機能解析を行った(Nakajima et al., J Biol Chem 275: 10484-10491, 2000)。さらにドミナントネガティブ甲状腺ホルモン受容体を用いた研究により、尾の筋細胞死には筋細胞が甲状腺ホルモンに自分自身で反応して「自殺」を行うメカニズムと甲状腺ホルモンに反応した周りの細胞から分泌された因子による「他殺」があり、この二つが協調している事を明らかとした(Nakajima & Yaoita, Dev Dyn 227: 246-255, 2003)。

ゲノム編集によって作製されたアルビノネッタイツメガエル

無尾両生類の幼生の尾部を切断し、その幼生をビタミンAで処理すると、尾が再生される代わりに後肢様器官(以下、過剰肢)が形成される(下図)。この「尾から肢へのホメオティックトランスフォーメーション現象(以下、HT現象)」は変態研究を行っている我々にとって魅力的な実験系と考えられた。なぜなら、本来幼生器官として変態とともに消失する運命の尾部から、変態後も維持される成体器官である後肢が産み出されるからである。この現象はモデル実験生物であるアフリカツメガエルでは再現できず、世界における研究は停滞している。しかし、近年になってトランスクリプトーム解析やゲノム編集技術などで、モデル実験動物以外の動物に応用可能な技術が発達し、アフリカツメガエル以外の無尾両生類でHT現象再現に挑戦する価値が高まってきた。我々はアフリカツメガエル、ネッタイツメガエル、および本邦産のRana属複数種でHT現象の再現を試みた。その結果、ニホンアカガエルやヤマアカガエルなど、複数の本邦産種で再現に成功し、さらに、過剰肢の発生位置と向きに規則性があることなどを発見した(Dev Growth Differ 59, 2017)。

尾から後肢へのホメオティック変異の一例

ネッタイツメガエルオタマジャクシ心臓の長期器官培養


[再生]
研究スタッフ・・・矢尾板芳郎(教授),鈴木厚(准教授),田澤一朗(助教),竹林公子(研究員)

発生研究部門では尾部や四肢再生関係の研究が行われています。