両生類研究センターの歴史
両生類は実験動物として傑出した点をもちながら、両生類で遺伝に関係した大きな分野が発展しなかったのは、実験室での飼育が困難で、子孫を得ることができなかったためでした。この飼育困難という障害を克服された理学部動物学教室の川村智治郎先生が在職中に挙げられた業績を基礎にして、両生類研究施設は、昭和42年6月に創設された、他に類例のない施設です。
創設時は第1研究部門「発生遺伝学」のみでしたが、昭和49年4月に系統維持班の附設が認められました。昭和56年4月、第2研究部門「生理生態学」が増設され、客員部門として認められた。昭和59年4月、第3研究部門「進化生化学」が増設されました。平成元年4月、第4研究部門「形質発現機構」が新たに増設されました。平成2年11月末には、東広島市の新キャンパスに、4つの研究部門の研究棟、飼育棟および野外飼育場が完成しました。新キャンパスへの移転は、平成3年2月から始まり、平成4年1月末に完了しました。
平成6年6月、10年時限が到来した進化生化学研究部門に代わり、種形成機構研究部門が新設されました。また、平成11年4月からは形質発現機構研究部門に代わり、分化制御機構研究部門が、平成16年4月からは種形成機構研究部門に代わり、多様化機構研究部門が固定部門として新設され、時限のある部門はなくなりました。平成25年4月から客員部門以外の3部門に代わり、3つの研究グループ「発生」「遺伝情報・環境影響」「進化多様性・生命サイクル」が新設されました。
その後、生命科学研究の急速な発展及び共同研究・リソース拠点としての機能強化の要望を受けて、平成28年10月1日に、理学研究科附属施設から学内共同教育研究施設の両生類研究センターに改組されました。この改組を経て、現在は進化発生ゲノミクス研究グループ、器官再生メカニズム研究グループ、卵形成・変態研究グループ、進化・多様性研究ユニット、発生再生シグナル研究ユニット、客員研究ユニットから構成されています。
また平成14年7月に、第1期ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)の課題「ネッタイツメガエル」の中核機関として選定され、この事業は第2期末の平成24年3月まで継続しました。第3期は同年6月から新規採択課題として再スタートし、現在は第5期課題として継続しています。また、今期よりネッタイツメガエルに加えてアフリカツメガエルとイベリアトゲイモリも対象種となり、課題名が「ツメガエル・イモリ」に変更されました。
令和3年春には新たにバイオリソース棟が竣工し、自動飼育システムの整備が進められました。
川村 智治郎 名誉教授・学長