変態研究グループ

研究紹介

 私たちの研究グループは両生類変態現象のメカニズムとその進化に関する研究を行っています。両生類の変態は100年以上前から研究されており、甲状腺ホルモンによって変態が引き起こされていることが知られています。しかし、その分子機構に関しては、意外にもいまだに多くの興味深い謎が残されています。また、カエルの変態現象と相同と考えられる発生過程が魚類や哺乳類の祖先の両生類にも認められることから、太古の変態現象やその機構は、四肢を持つ動物の4億年程の歴史の中で形を変えながら受け継がれているものと考えられます。
 現在私たちは変態機構解明に向け、甲状腺ホルモン受容体の機能に着目して研究を進めています。顎のある脊椎動物の甲状腺ホルモン受容体にはα型とβ型というよく似た2種類が存在します。私たちはゲノム編集技術を用いて、カエルの変態においてこの2種類に異なる役割があることを発見しました。その過程で「急激な尾の退縮は脊索の崩壊によるもの」を示唆する証拠を得たため、現在はこの新規仮説を提唱し、それに基づき、さらに研究を進めています。
 変態機構の進化発生学的研究としては「脊椎動物の陸上化機構解明」を進めています。両生類の変態は、魚から四肢動物に進化した際の陸上進出の進化過程を個体発生の中に再現していると言えます。私たちは魚類と両生類のゲノム比較とゲノム編集による機能解析などにより、両生類がどのように発生機構を変化させ陸上に適応したのか解明していきます。その一環として四肢の発生に関する研究を現在行っています。

スタッフ

*「広島大学研究者総覧」では教員の連絡先、教育担当状況、研究業績などが閲覧できます(公開項目は教員によって異なります)。

過去の在籍者

客員准教授
古野 伸明
理学博士

リンク

理学研究科「研究者への軌跡」

学生・大学院生

博士課程後期 3年 吉村 雅子 「四肢動物の後肢の骨格が脊椎骨と連結するメカニズムに関する研究」
博士課程後期2年 小川 修平 「甲状腺ホルモン刺激から肢形成にいたるまでの遺伝子制御ネットワークの解明」
博士課程前期1年 中西 健介 「樹上性カエルの指趾第一関節に見られる付加的骨格要素の比較発生学的研究」
学部4年 柳田 翼

過去の在籍者

博士課程前期 修了 藪本 壮太 「ネッタイツメガエル Xenopus tropicalis における Olfm4 遺伝子の機能解析」
博士課程前期 修了 西嶋 達郎 「ネッタイツメガエル Xenopus tropicalis を用いた卵母細胞の G2 期停止における Pkmyt1, Wee2 の機能解析」

(2024.4.9)

グループからのメッセージ

学生の方へ
 私たちの研究室は、変態現象とその機構を広く解析することで脊椎動物の進化研究に取り組んでいます。ゲノムを対象とした研究から個体を使った研究までと、その対象範囲は大変広いです。私たちの研究室に興味を持っていただけたら気軽に相談してください。この広い範囲の中に、きっと興味ある分野があり一緒に面白い研究ができると思います。