背景にあるテーマの「生命の連続性」,それを実現している7つのキーワード,「生殖細胞」,「性決定」,「性分化」,「精子形成」,「卵形成」,「受精」,「全能性」の中から,今回は「性決定」に関して報告します。
主役は,ネッタイツメガエル(Xenopus (Silurana) tropicalis)です。ネッタイツメガエルは2倍体であり,偽4倍体であるアフリカツメガエル(X. laevis)の近縁種です。ネッタイツメガエルの性決定機構は,アフリカツメガエルと同じ雌ヘテロ型であるZZ/ZW型であると考えられていました。しかし最近では, Z染色体やW染色体に加えて,一部のネッタイツメガエルの性決定ではY染色体が関係するかも知れないという報告がされています。今回,性ホルモン処理により雄から雌へ性転換させた個体を用いて,何年も掛けて交配を重ねたところ,これまでに両生類では報告されていないYY超雄の作製に成功しました。さらに,卵のゲノムだけで発生させた卵核2倍体の性を調べてみると,全てが雌でした。つまり,今回の研究に用いたネッタイツメガエルは,XX/XY型の性決定機構を持っていたのです。両生類の遺伝的性決定機構には,XX/XY型とZZ/ZW型が見られます。両生類の性決定遺伝子に関して,これまでにアフリカツメガエルの W染色体上にある雌決定遺伝子(DM-W)は報告されていますが,Y染色体上に存在するであろう雄決定遺伝子は未だに報告されていません。さらに,DM-Wはネッタイツメガエルには無いようです。そこで,今回の成果が両生類における雄決定遺伝子の同定や精巣分化機構の解明,さらに性決定機構の進化などに将来役立つことを期待しています。

(高瀬 稔)