進化発生ゲノミクス研究グループの大学院生のNusrat Hossainさんの第一著者論文がDevelopment Growth & Differentiation誌に掲載されました。
ヒトの屈曲肢異形成症(Campomelic Dysplasia)は、顎や四肢、心臓、腸等の様々な臓器にわたる形成不全が、その一部のみ、あるいは多様な組み合わせで発症するシンドローム型遺伝病です。これまでの研究から、この遺伝病がsox9遺伝子の変異によって引き起こされることはわかっていましたが、なぜ患者によって表現型が多様に変化するのか、その理由は不明なままでした。この問題を解くために、本研究ではノム編集技術を用いて、ネッタイツメガエルのsox9遺伝子に様々な変異を導入して、その表現型解析を行いました。その結果、sox9遺伝子の機能を完全に欠損させると、顎や心臓、腸などの全ての臓器の形成不全が起きるのに対して、脊椎動物の中でもヒトを含む顎を持つ動物(顎口類)のみが持つ部位(Jawed vertebrate-specific amino-terminal domain, JAD)を欠失させると、顎の形成不全のみが起こり、その表現型はヤツメウナギ等の無顎類を連想させるものでした。以上の発見は、Campomelic Dysplasiaに見られる表現型多様性の遺伝的基盤を明らかにすると共に、無顎類から顎口類への進化にはsox9遺伝子におけるJADの獲得が重要であったことを示しています。

Hossain, N., Igawa, T., Suzuki, M., Tazawa, I., Nakao, Y., Hayashi, T., Suzuki, N., & Ogino, H. (2023). Phenotype–genotype relationships in Xenopus sox9 crispants provide insights into campomelic dysplasia and vertebrate jaw evolution. Development, Growth & Differentiation, 1–17. https://doi.org/10.1111/dgd.12884