進化発生ゲノミクス研究グループの鈴木誠准教授は、米国プリンストン大学のRebecca D. Burdine教授との共同研究により、心臓の左右非対称性が形成される過程におけるF-アクチン細胞骨格の動態変化とその発生学的意義を明らかにしました。この成果は、国際科学誌Development誌に掲載されました。
心臓はヒトを含む全ての脊椎動物にとって生命維持に欠かせない重要な器官であり、その形成異常は重篤な先天異常である先天性心疾患を引き起こします。脊椎動物の心臓は、胚発生の初期段階で左右非対称な形態を獲得します。本研究では、モデル生物のゼブラフィッシュを用いて、心臓がどのように左右非対称な形態を作り出すのかを細胞レベルで解析しました。その結果、心臓前駆細胞が左方向へ移動する現象が、Nodalシグナルによって制御されるアクチン細胞骨格の非対称的な動態によって引き起こされることを突き止めました。
この発見は、心臓形成におけるシグナル伝達の時空間的な制御が、器官形態を作り出す細胞運動の基盤となることを示唆するものであり、脊椎動物の心臓発生メカニズムの理解に新たな知見をもたらしました。
Gonzalez V, Grant MG, Suzuki M, Christophers B, Rowland Williams J, Burdine RD. Synergistic and independent roles for Nodal and FGF in zebrafish cardiac progenitor cell migration and asymmetric heart morphogenesis. Development. 2025 Oct 1;152(19):dev204873. doi: 10.1242/dev.204873. Epub 2025 Oct 10. PMID: 40948237.